万事屋に再び、公僕にしては派手な出で立ちの無口な男が訪ねて来た。
今回は少しは慣れたのか、ソワソワモゾモゾとしながらも促されるままソファーに掛ける。

「で、今度は何の依頼だ?」

客を客とも思わぬ態で社長席で足を組みながらふんぞり返り、銀時が横柄に尋ねる。

[か、桂さんにコレを渡して貰えませんか]

一応意思の疎通の仕方も微かに進化したらしい。
いや、僅かにみえるが彼にしては大いなる進歩だ。
持ち込んだノートに記入する。

彼、斉藤終をここまで変えたのは誰だったのか。

んだよ、プロポーズかよと言う銀時の言葉に顔を真っ赤にし、広げた両手の平と共にブンブンと振り必死に否定する。
今日の万事屋さんは何だか怖いZ…。
涙目になりながら。

「でもよ、告るんだろ」

絶句というには元より、言葉を発してはいなかった。

孤独に生きてきた私の前に突然現れ、人の心に入り込んで来た変装した桂さん。
お友達になりたいと願っていた‥が、これは恋というものではないだろうか。
彼が気になって気になって仕方がない。
気付かれないよう物陰から見詰め、いつしか局長と書いてストーカーのようになってしまった。
いや、シャイな私にはあんな変態じみ…大胆な真似はできないが。
ただ自分ももう少し勇気を出してお近付きになってみたい。

[///]

とノートに書くと、万事屋さんからドゴォと蹴りを入れられた。
今日の万事屋さんは本当に冷たいZ。
ぐすっ。

「大体よ、ヒマワリなんか生意気なんだよ」

生意気???

[太陽のような桂さんにお似合いと思ったのですが]

それを聞いた万事屋さんは、アレのどこが太陽なんだと毒付き始めた。

[い、言い過ぎですっ!!!]

大切な桂さんの事をけなされ思わずそんな台詞を書いてしまってから気付いた。

「つか、あいつはこんな派手な花とは違ってだな…その‥もっと清楚ってーか可憐つーか……」

モニョモニョと何を言っているのか聞き取れなかったが、万事屋さんの頬は何故か赤かった。

「ともかく!こんな下らねェモンは依頼でもなんでもねーテメェでなんとかしろ」

そうか、誰かに頼むんじゃなくて自分で─。

[ありがとうございましたっ]
「おう」

万事屋さんは手土産の饅頭だけはしっかり受け取り、モグモグとほおばりながら見送った。

そうだ…自分で。

[ああっ!!!]

思わず大声を書く。
俺は敵なんだったZ。
逃げられるに決まってたんだZ‥。
だが恋しくて恋しくてしょうがない。


「む」

桂は見慣れない男に呼び止められた。
正確には呼ばれたわけではなく、文字を示されたのだが。
サラサラの髪だったが目元と引きつった口がどこか見覚えの有る気がした。

[あの…っ、ここここの辺りでおいしいお蕎麦屋さんが有るかご存知ありませんかっ!?]

桂の目がニコリと細まった。
可愛いZっ。

「ふむ、蕎麦屋か、俺は詳しいぞォ。
以前西郷殿に投げ飛ばされた三丁目の─」

[じっ、実は私方向音痴でして。
よよよよろしければ案内していただけないでしょうかっ!!!]
「よかろう」

桂が先に立つ。
夢の…ようだZ………。
斉藤の緊張は極限で、ストレートパーマが緩んでしまいそうだった。

桂が店の前で手招いた。
かっ、桂さんが俺を呼んでいるゥゥゥ!!!
そして暖簾の前で腕を組んだ。

「俺も食うか」
[!!!]

猫に鰹ぶ‥渡りに船とはこのことだった。

[お礼にぜひ奢らせてください!!!]

蕎麦好きの桂と一緒に食す。
これこそが斉藤の夢だった。
…武士がこの程度で礼などとと払わせて貰えなかったが。
横目で盗み見る桂さんの姿は髪から爪先までとても美しかった。
品良く蕎麦を啜る‥赤くて…形の良い‥唇……。
ああ頭がクラクラする。

バタリ。

純情な斉藤には最早刺激がキツかったらしい─。

目を覚ますと天女が居たZ。

「あ、オイ!?」

桂の膝枕で目覚めた斉藤は、再び気を失った。

「仕方の無い奴だ」

桂はそっとモジャモジャに戻った髪を撫でてやった。

「お前もまんざらでもないんじゃねェの」
「銀時」

よくは分からぬが頼みごとを引き受けてやったと言うのに恋人の顔は何故か不機嫌だ。

「まあな、フワフワで存外可愛い奴だ。

貴様ほどではないが」

桂はそうフワリと微笑んだ。

「帰るぞ」
「あ」

銀時が珍しくツレのように桂の手を引いた。


斉藤が再び目覚めると、手には渡せなかったヒマワリの花だけが残っていた。

[渡せ‥なかったZ…]

でも一歩だけでも近付けた。
次はきっと───。


「ん」

いつもならすぐに暴力を振るってくるような恋人が今日はどうかしたのだろうか。
桂は更なる彼らしからぬ行動に驚いた。

「お前が俺に‥花?」
「違ェ!!テメェに花を送ってくれだとよ」

そうか‥銀時からではないのか……。

「ふむ、綺麗だな。
オシロイバナか」
「俺のは、こっちだ」

プイとぶっきらぼうに押し付けられた淡黄色の花。
その意味を知ってか知らずか、ボダイジュの枝を握り締める桂の顔は幸せそうにほころんだ。

「‥俺のヅラに花なんざ百年早ェんだよ
でもまあ、渡しといてやったからな」

銀時は一人ボソリと呟いた。


ひまわり…「私はあなただけを見つめる」「愛慕」「崇拝」
オシロイバナ・・・「あなたを思う」「臆病な愛」
ボダイジュ・・・「夫婦愛」「結ばれる愛」


(完)
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